マラソンマッチのビジュアライザいろいろ

ラソンマッチのビジュアライザについて、各者/各社さまざまな作り方をしているので、まとめてみました。

longcontest-visualizer-framework

kimiyukiさんのlongcontest-visualizer-frameworkおよびRCO/リクルート日本橋ハーフマラソンで使われている方法
(お互いに参考にしながら開発している?)

github.com

github.com

  • 時系列ごとに行動を出力する形式の問題では、時系列に沿った状況の推移が見たい。そのため、UIで時系列に沿って再生・巻戻し・早送りする機能がある
  • 入力・出力から毎フレームの情報を計算したのち、各フレームの情報をhtmlのCanvas 2Dに描画する
  • Canvasを画像に変換したり、動画に変換する機能もある(https://github.com/jnordberg/gif.js を使っている)

画像出力からの動画変換

https://github.com/kmyk/atcoder-heuristic-contest-002/blob/master/scripts/visualize.py

以下のようにして、AtCoder Heuristic Contest002の焼きなましの解の改善の様子を動画で出力している

  • ----BEGIN----と----END----と囲まれた範囲はビジュアライザ用出力とする。解法プログラム内で一定間隔ごとにビジュアライザ用出力を行うようにしておく。
  • 各ビジュアライザ用出力ごとに公式ビジュアライザを呼び出して画像を出力する
  • 出力された画像をffmpegで動画に変換する

画像を出すだけなら、いろんなアプローチがある(Pythonのmatplotlib, RustのSVGクレートなど)。とりあえず画像を出力してffmpegで動画変換というのは汎用的なアプローチかもしれない。

gvc/General Visualizer Client

colunさんのマラソンマッチ用ビジュアライザのプロトコル/ライブラリ

https://github.com/colun/gvc

www.youtube.com

解法プログラム内でプロトコルに沿った形式で命令を出力し、それを読み込んでJavaプログラムで表示する

siv3d

「ゲームとメディアアートのための C++ ライブラリ」であるsiv3dを用いて表示する

siv3d.github.io

Unity

天下一 Game Battle Contest 2021 Spring で使われた方法

tenka1.klab.jp

https://github.com/KLab/tenka1-2021-spring

UnityのWebGLビルドを使っている。魅せる目的では有効そう。ビジュアライザで求められる要件とゲームエンジンの相性は良いように思えるが、さすがにヘビーな気はする

React

最近私が研究しているアプローチ

ナーススケジューリング問題を焼きなまし法により解く
https://threecourse.github.io/nurse-scheduling-simulated-annealing/

  • Reactは開発が積極的に進められているGUIであり、情報が手に入りやすい
  • 問題の入力の作成もGUIでやって、それをバックエンドの解法プログラムに投げたり、作り込めばかなり柔軟性が高い
  • 1万個以上の要素を表示しなくてはいけないことがある。このとき、何も考えないとそれらのレンダー処理で表示のパフォーマンスが悲惨なことになる。ReduxやuseSelectorフックを上手く使い変化する要素のみ再レンダーするようにすると、問題なく表示できる。

ソフトウェアのアーキテクチャについて(その3)~ 良書とクリーンアーキテクチャ

以下の記事の続きです。 threecourse.hatenablog.com

ドメイン駆動設計についての書籍

ドメイン駆動設計周りを学ぶには、以下の2冊が良さそう。

有名な実践ドメイン駆動設計(www.amazon.co.jp/dp/B00UX9VJGW)を最初に読むと、主張が分かりづらかったり、概念の定義がはっきりとなされていないように思います。上記の書籍は、定義をできる限り明確に説明していたり、具体例で表現しているため比較的分かりやすいです。

クリーンアーキテクチャ

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クリーンアーキテクチャという良さげな設計があるらしく、上の図で表されます。
こちらもClean Architecture 達人に学ぶソフトウェアの構造と設計(www.amazon.co.jp/dp/B07FSBHS2V) を読んでも良くわからない部分があり、「ドメイン駆動設計入門」の著者のQiitaおよびGithubが参考になりました。

以下は私の理解です:

  • 具体的なクラスでなく、インターフェイスに依存することによって、柔軟性やテスト容易性を増す
  • 双方向に具体的なクラスに依存させると密結合になってしまう。だからといって双方向で抽象に依存させられるかというとそうではない。例えば、ユーザー作成処理をユーザーという具体的な概念なしに定義するのはむしろ不自然。
  • よって、具体的なクラスへの依存は片方向とし、逆はインターフェースへの依存としたい。Entities ← UseCases ← Controllers/Gateways/Presenters という方向への具体的なクラスへの依存は許容するが、逆方向は許容しない。
    つまり、UseCasesはEntitiesを利用できるし、ControllersはUseCasesを利用できるが、EntitiesはUseCasesをインターフェースを通してのみ参照でき、UseCasesはControllersをインターフェースを通してのみ参照できる

  • 処理は、インターフェイスで定義されるUseCaseとその実装であるInteractorで定義される

    • UseCaseのインターフェイスは、void Handle(UserCreateInputData inputData)のように入力を処理するだけである 
    • Interactorの実装は、IUserRepository, IUserCreatePresenterといったフィールドを持ち、入力を処理するときにレポジトリと連携してユーザ作成処理を行い、その結果を適切に表示させる、ということができる
    • UseCase/Interactorの入力、出力にはDTO (Data Transfer Object) として必要な値をまとめたオブジェクトを定義する
  • インターフェイスには、最終的に具体的なクラスを設定する必要がある(=依存オブジェクトを注入する必要がある)。各クラスのコンストラクタでいちいちセットする方法もあるが、この処理を行うためのDIコンテナと言われるライブラリがある。

ADOP

クリーンアーキテクチャを読んでいて、Entities, UseCasesとそれ以外を明確に分離することは有益であるが、小さなプロジェクトの初期段階から各インターフェイス・オブジェクトを作っていくのは非効率で煩雑ではないのかな。。
と思っていたら、上記の著者の方がADOPという実装パターンを考案されていて、納得感がありました。

https://nrslib.com/adop/

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私の理解では、以下のとおりです。

  • ドメインレイヤー(Domain Layer)、アプリケーションレイヤー(Application Layer )、アザーズレイヤー(Others Layer)に分ける。
  • Domain Layerには、ソフトウェアを適用しようとする対象領域(ドメイン)の事物を直接的に表現するコード、もしくは表現を支援するコードを記述する
  • Application Layerには、ドメインの事物を表現するコードを取り扱い、ソフトウェアで成し遂げたいユースケースを達成するコードを記述する
  • Others Layerには、アプリケーションレイヤーとドメインレイヤー以外のもの、例えばユーザーインターフェイスやデータベースに関するコードなどを記述する
  • Domain LayerのオブジェクトがApplication Layerに利用される、Domain Layer, Application LayerのオブジェクトがOthers Layerに利用されるのは問題ない。逆の場合は具体的なクラスを使用してはダメで、インターフェイスなどを通して汎化して利用する。

AtCoder Heuristic Contest 002 参加記

atcoder.jp

スコア4.32M 107位 パフォ2117でした。

解法

  • mmlang (https://github.com/colun/mmlang) を使ってビームサーチ
  • 点数は見ない
  • 36分割して一筆書きのルートを設定し、できるだけ進みが遅い方を加点、ルートからはみ出たら減点
  • 評価がタイのものは乱数を入れてランダムに評価

dfsの方が良かった説とか、焼きなましをしないと最上位は厳しいという話はありますが、ビームサーチにベットする戦略をとったのである程度しょうがないですね。

mmlang

github.com

mmlangを改造して以下のような機能を追加して使いました。結局使ったのは標準エラー出力機能のみでしたが。

  • パラメータを引数で読み込む機能
  • 標準エラー出力に出力する機能
  • ファイルに出力する機能
  • ファイルに結果をJSONで出力する機能

mmlang無しにはこのスコアは出せていないと思うので神です。 一方で、入力をバグらせて最初の1時間溶かしたので、もう少し慣れたり、デバッグ用機能を拡充したほうが良さそうですね。

Cloud Run

Cloud Runに投げて並列でパラメータチューニングを試みましたが、

  • そもそも変えるパラメータが無かった
  • 結果が安定しない、確率的にエラーが発生するなどの複数の問題が発生した

という点で、結局使用することは無く。

colunさんのMM Languageを学ぶ

colunさんの作成されたMM Languageを学んでみます。
https://github.com/colun/mmlang
https://github.com/colun/mmlang/blob/master/doc/introduction.md

ラソンマッチに勝とう!という目的というよりは、DSLや抽象化を考察することで何かに役立てられないかという視点で学んでいます。 ただ、革新的なアプローチであり、実力以上の上振れが出るかもしれないので、興味のある方はぜひ実戦に使ってみると良いのではないでしょうか。

試験的にnotionでも公開してみました。
https://www.notion.so/colun-MM-Language-01a3c5bf337149889888df0c947bb7f6

以下、私の理解なので誤りがある部分も含まれるかもしれません、ご注意下さい。

MM Languageの概要

いわゆるDSLで、独自形式の言語でコードを記述すると、C++コードに変換し実行することができます。
(注:ここではDSLとしていますが、私がそう解釈しただけであり、その呼び方が適切でない可能性はあります)

目玉機能として、ループ演算子とビームサーチがあります。

特にビームサーチについて、通常はロジックの本質でない状態管理のコードを書く必要がありますが、MM Languageのビームサーチでは状態管理を自動的に効率的に行ってくれるため、本質部分に集中できます。 https://github.com/colun/mmlang/blob/master/doc/introduction.md#ビームサーチ

入力例は以下です。
https://github.com/colun/mmlang/blob/master/examples/chokudai005a.m2

出力例は以下です。
https://github.com/colun/mmlang/blob/develop/examples_outputs/chokudai005a.cpp
出力は元の入力コード(これはコンパイルされない)+ライブラリコード+変換後コード で構成されます。

DSL

DSLの文法は、PythonC++が混じっている感じです。

PythonのLarkというDSLのパーサが使われています。
https://github.com/lark-parser/lark

動かすときの流れは、

  1. MM Languageの文法に沿ったコードを書き、拡張子.m2で保存する
  2. コマンドラインからDSLのパーサを起動し、変換を行うと、C++に変換されたコードが出力される(—runオプションをつけると、自動的にコードが実行される)
  3. コンテストには、変換されたC++コードを提出できる。

https://github.com/colun/mmlang#readmeを参照)

ここで、変換後のファイルは以下で構成されます。

  • 元の.m2の入力コード (確認用、ディレクティブによってコンパイルされないようになっている)
  • C++のライブラリコード
  • .m2をC++に変換したコード

ループ演算子

本家の説明は以下にあります。

https://github.com/colun/mmlang/blob/develop/doc/introduction.md#ループ演算子

「ある文中にループ演算子が出てきた場合、文の外側にループを作成し、ループ演算子の箇所をループ変数で置き換える」と理解するのが分かりやすいと思います。

なので、被代入側でも代入側でも利用することができます。

// 被代入側にループ演算子を適用する例 - 入力コード
A[0:3] = inputInt()
// 被代入側にループ演算子を適用する例 - 変換後C++コード
for(int $1=0; $1<3; ++$1) 
    A[$1] = inputInt();
// 代入側などにループ演算子を適用する例 - 入力コード
print(0:3)
// 代入側などにループ演算子を適用する例 - 変換後C++コード
for(int $1=0; $1<3; ++$1) 
    print($1);

(実際のコード変換とは異なります)

なお、

  • 文中にn個のループ演算子を使用した場合、n重ループとなります。
  • ループ変数をバインドし、文の他の箇所で使用することができます。

ビームサーチ

本家の説明はこちらになります。

https://github.com/colun/mmlang/blob/develop/doc/introduction.md#ビームサーチ

使い方は以下のようになります。

  • ビームサーチのメインとなるロジックの関数に、@beamのようなデコレータをつける
     (以下、更新関数ということにします)
  • 更新関数は、引数としてスコア・ハッシュ・操作などの情報をとる
  • 更新関数は、ある状態から開始し、操作を行い次の世代の状態に更新したのちに、更新関数を再帰することで次の世代の状態の作成を行う
  • 更新関数内で状態を管理する変数は、xarray, xvectorなどのメモリ自動管理型のデータ構造を利用する

通常はビームサーチを行う場合、状態の巻き戻し処理を行うか、盤面全体をコピーするかという処理が必要になります。MM Languageでは、ビームサーチクラスの機能およびメモリ自動管理型のデータ構造によって、自動で状態の巻き戻し処理が行われます。

ビームサーチの深み

では、上記のような挙動はどのような仕組みで実現されているのでしょうか?

ビームサーチの流れ

  • ビームサーチのノード(xbeam$node)は、状態およびスコア、親ノードなどの情報を持ちます。
  • ビームサーチクラス(xbeam)は、current_ranking, next_rankingという2つの変数を持ちます。これらは両端プライオリティキューであり、スコアとノードへのポインタを要素とします。
  • 最初はcurrent_rankingに初期状態のノードをセットします。

以下を繰り返すことで、ビームサーチを行うことができます。

  1. current_rankingのスコアの最も大きいノードを処理します。
  2. 処理対象のノードの状態に対して、更新関数が実行されます。 更新関数の中で再帰で更新関数が呼び出されたときに、next_rankingに次の状態のノードを追加します。 ただし、ビーム幅を超える数のノードがnext_rankingに存在する場合、スコアの最も小さいノードは除外されます。
  3. 1-2を繰り返します。 current_rankingが空になるか、時間が経過した場合は次の世代のノードの実行に移ります。 次の世代の実行は、current_rankingにnext_rankingをコピーし、next_rankingを空にすることで行います。

状態の自動管理の実現

上記を単純に行うと、状態がめちゃくちゃになってしまいます。自動的な状態の巻き戻しをどう実現しているかを以下で説明します。

  • xarray, xvectorなどのメモリ自動管理型のデータ構造は、その値が変更されるときに、変更点を記録する仕組みを持っている。 つまり、変更されるときに「変更箇所のポインタ、値のサイズ、変更前の値」を記録する。
    (xmemクラスの静的変数であるbufferに記録領域を確保している)
  • 更新関数は、更新の最初から最後までの操作履歴をpatchとして保存する。 つまり、メモリ自動管理型のデータ構造による変更をウォッチし、「変更箇所のポインタ、値のサイズ、変更前の値、変更後の値」のリストを保存する。
    (データ構造による変更のウォッチは、実際にはxmem::bufferの使用領域の増加分のみをみている)
  • patchの情報があれば、更新前の状態からredoして更新後の状態にすることも、更新後の状態からundoして更新前の状態にすることもできる。
  • ビームサーチのノードは、「世代(depth)、親ノードのポインタ、patchのポインタ」の情報を持つ
  • ビームサーチでは、ノードAを計算した後に別のノードBの計算を行うことになる。 このとき、状態をノードBの時点に変更してから計算する必要がある。
  • ノードAからノードBの状態への変更は、ノードAとノードBの共通の先祖であるノードCを見つけ、ノードAからノードCまでのpatchをundoしていき、ノードCからノードBまでのpatchをredoしていくことで実現できる。(以下はイメージ図)

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ソフトウェアのアーキテクチャについて(その2)~ ドメイン駆動設計から得られる知見

以下の記事の続きです。

threecourse.hatenablog.com

参考文献

以下の本でドメイン駆動設計について学んだところ、小〜中規模のプログラムの設計・記述についてもなかなかの知見・示唆が得られたので、まとめてみます。

以下も良い本らしいですが、まだ読んでないです

ドメイン駆動設計とは何か?

そもそもドメイン駆動設計とは何か?ということなのですが、私の理解では以下です。

  • ソフトウェアを開発する対象となる領域の知識に焦点を当てた設計方法
    ドメインの概念や事象を理解し、その中から問題解決に役立つものを抽出して得られた知識をソフトウェアに反映する。
  • ドメインとは、ソフトウェアの対象とする知識、影響、または活動の領域
  • 例えば会計システムであれば、金銭や帳票といった概念、その関係性や操作を適切にモデリングして設計する

ソフトウェアの対象とする領域を理解してモデリングしなきゃいけないのは当たり前だと思うので、これだけであればそれはそう、という感じ。

以下、「ドメイン駆動設計入門 ボトムアップでわかる!ドメイン駆動設計の基本 」をもとに具体的なパターンをまとめてみます。筆者の勝手な解釈が入っているため、元の書籍と記述が同じとは限りません。

概要

ドメイン駆動設計入門 ボトムアップでわかる!ドメイン駆動設計の基本 」では、ドメイン駆動設計のパターンが以下に分けられています。

知識を表現するパターン

  • 値オブジェクト
  • エンティティ
  • ドメインサービス

アプリケーションを実現するためのパターン

知識を表現する、より発展的なパターン

  • 集約
  • 仕様

1. 知識を表現するパターン

1.1 値オブジェクト

「値」をクラスや構造体とするなどしてオブジェクトとして定義したもの

  • 氏名を表すクラス(姓、名をフィールドとして持つ)
  • 通貨を表すクラス(量、種類をフィールドとして持つ)
性質
  • 不変である・交換が可能である
    値を変えたい場合には代入によって変更する、それ自身の値が変わることはない
  • 等価性によって比較される
    姓と名が同じであれば同じものであるとする、通貨の量と種類が同じであれば同じものとする
メリット
  • 表現力を増す
    値オブジェクトのクラスの定義のコード自体によって、氏名は姓と名から構成されるということが示される。
  • 不正な値を存在させない
    コンストラクタで判定するなどして不正な値を除外できる
  • 誤った代入を防ぐ
    ユーザIDに商品IDを代入するようなことをできなくする
  • ロジックの散在を防ぐ
    値オブジェクトに関連する処理をそのクラスにまとめて記述することができる
感想

上手く使うと便利。つい文字列で素朴に持ちがちな値も、構造体やクラスにまとめると見通しが良くなることがある。

1.2 エンティティ

同一性によって識別されるオブジェクト

  • ユーザ(姓、名、ユーザID、ユーザ種別などのフィールドを持つ)
性質
  • 可変である
    再代入ではなく自身のフィールドの値を変えることで、ユーザ名などを変更できる
  • 同じ属性であっても区別される
    姓や名といった属性が同じだけでは同一であるとは言えない。ユーザIDのような識別子で同一性を表す
  • 同一性を持つ
    ユーザ名などを変更したとしても同一のユーザとして認識される
メリット
  • コードのドキュメント性が高まる・ドメインにおける変更をコードに伝えやすくなる
    エンティティに関連するルールはそのクラスにまとめて記述することができる
感想
  • エンティティは値オブジェクトとの対比で理解するのがよさそう。
  • 値オブジェクトはクラス化するのは自然ではない(氏名は文字列として持ってしまうことはありそう)なのだが、エンティティはクラス化するのは自然なので、これらのメリットはオブジェクト指向のメリットといえる
  • エンティティはライフサイクルを持つというのは大きな特徴といえる

1.3 ドメインサービス

値オブジェクトやエンティティに関連するが、値オブジェクトやエンティティに記述すると不自然なふるまいを定義するクラス

ユーザの重複を確認するメソッドはユーザクラス自体に定義するとちょっと変。 UserServiceクラスを定義し、そこにExistsメソッドで確認するようにすると自然になる

感想

値オブジェクトやエンティティに記述すると不自然なメソッドをどう書こう・・と悩んだことがあるのでなるほどという感じ。名前もManagerとかUtilとかで悩んでいたが、Serviceを使えば良さそう。

2. アプリケーションを実現するためのパターン

2.1 リポジトリ

データの永続化と再構築の処理を抽象的に扱うためのオブジェクト

例およびメリット

アプリケーションを作る上では、ユーザの生成・変更といった処理をデータベースなどに反映し、「永続化」する必要がある。また、永続化されたデータから、ユーザーIDで検索するなどしたユーザをオブジェクトとして「再構築」する必要がある。

ここで、直接ユーザからデータベースを叩くコードを書いてしまうと、具体的なデータベースの操作を記述することになり、分かりづらく密結合なコードとなってしまう。 そこで、ユーザはIUserRepositoryインターフェイスに対して操作を行い、データベースとの接続等の処理はIUserRepositoryを実装したUserRepositoryクラスで行うことにする こうすることで、テストも行いやすくなる。リポジトリの実装をテスト用のものに差し替えることで、いちいちデータベースをセットアップする必要が無くなる。

感想

これもなるほど。知らないと直接データベースを叩いてしまうことがありそう。リポジトリだけでなく、一歩抽象化する思考を身に着けておくと応用が効きそう

2.2 アプリケーションサービス

ユースケースを実現するオブジェクト

ユーザの登録処理、ユーザ情報取得処理、ユーザ情報更新処理、退会処理といった処理を記述するクラス

論点
  • アプリケーションサービスはあくまでドメインオブジェクトのタスク調整に徹するべきであり、ドメインのルールを記述すべきでない
  • データ転送用オブジェクト
    ドメインオブジェクトを公開するかどうかという論点がある。

    • ドメインオブジェクトを公開する場合、ユーザ情報取得処理でユーザを直接返してしまう方法をとる。これは楽であるが、アプリケーションサービス以外がドメインオブジェクトを自由に操作できてしまうリスクがある。
    • 別の方法として、DTO(データ転送用オブジェクト)にデータを移し変えるという方法がある。つまり、IDと名前というフィールドを持つUserDataオブジェクトを返すようにする。
  • コマンドオブジェクト
    更新処理を定義するときに、ユーザ名だけを変更したいときもあれば、メールアドレスだけを変更したいこともある。このとき、引数で制御する方法もあるが、追加のたびにメソッドの引数が変わってしまう。この対処法として、コマンドオブジェクトを定義し、更新処理の引数としてコマンドオブジェクトを渡すという方法がある。

2.3 ファクトリ

生成を責務とするオブジェクトのこと

採番処理機能を実装したユーザ生成を行うため、IUserFactoryインターフェイスを実装したUserFactoryクラスを用いる

3. 知識を表現する、より発展的なパターン

3.1 集約

データを変更するための単位として扱われるオブジェクトの集まり

自動車とその要素である車輪・位置・タイヤがある場合に、自動車オブジェクトおよびそのフィールドとなる車輪・位置・タイヤのオブジェクトを定義する。 外部からは直接に車輪・位置・タイヤを参照せず、自動車オブジェクトに定義したメソッド経由で扱うようにする。このときの自動車オブジェクトを集約ルートという。

3.2 仕様

オブジェクトの評価を行うオブジェクト

オブジェクトの評価は単純なものであればメソッドとして定義すればよい。しかし、複雑な評価を仕様オブジェクトとすることで、評価のルールを切り出すことができる。 例えば、CircleFullSpecificationというクラスにサークルが満員かどうかという判定を定義し、それをアプリケーションサービスで呼び出すような方法がある また、仕様オブジェクトに対するAND/OR演算を定義するようなこともできる。

感想
  • Strategyパターンに似ているように思えた。評価・戦略といった抽象的な概念をオブジェクトとすることで見通しが良くなることがある。

その他

CQS/CQRS(コマンドクエリ分離原則、コマンドクエリ責務分離原則)

状態を変更するメソッドとそうでない単に問い合わせをするメソッドを区別すると良い。

フロントエンド何もわからない(その5)〜 React Hooks + Redux + TypeScriptでいいんじゃね

去年から悩んで来ましたが、React (React Hooks + Redux) + TypeScript に落ち着きそうな気がしてきました。

前提

Webページの制作よりは、ヒューリスティックコンテストや数理最適化などのビジュアライザをさくっと作るのが主な目的です。

メインのフレームワーク

React (React Hooks + Redux) + TypeScript としました。

React Hooks + Reduxの使い方はこんな感じでシンプルです。

  • ReduxのReducerやActionを定義
  • Providerを定義し、Reduxのストアをコンテキストとして情報を伝える
  • useSelectorで状態を取得、useDispatchで状態を更新

セルの値をボタンやクリックで変更するだけの簡単なサンプルを作成しました。
https://threecourse.github.io/app-cells-react (Github Pages)
https://github.com/threecourse/app-cells-react (ソースコード

以下、雑感です。

  • 用いる方法によっては、メソッドや状態をコンポーネントの親子関係に沿って受け渡すバケツリレーが発生するが、このやり方ではその心配がない
  • 関数コンポーネント + React Hooksで書く方がクラスコンポーネントで書くより良い様子
    クラスの方が「ちゃんとしていて拡張性が高い」イメージがあったが、Reactはどうもそういう訳ではないらしい。 
  • TypeScriptは入れない選択肢もあるが、型が付くのはやはり強力
  • 型をより精緻に書いたり、useMemoなどを使って高速化したり、非同期を上手く処理するのは今後の課題
  • 初心者が作る場合Nuxt.js/Vue.jsで開発するほうが悩む場所が少ないかもしれない。 ただ、コンポーネントの再利用性やTypeScriptとの親和性を考えると、Reactが優位に思えた

参考文献

TypeScriptは以下の本が良くまとまっています。Kindle Unlimited対象ですが普通に買っても良いと思いました。
速習 TypeScript 第2版 速習シリーズ
https://www.amazon.co.jp/dp/B086JKVGPB

React/Reduxは公式ドキュメントが良さそう。
https://ja.reactjs.org/
https://ja.reactjs.org/docs/hooks-intro.html
https://redux.js.org/
https://react-redux.js.org/
https://react-redux.js.org/api/hooks

Linter設定

Linterおよびその他の環境構築は以下を参考にしました。
create-react-app Lint構築よくばりパック(ESLint + TypeScript + airbnb + Prettier + lint-staged & husky + VSCode拡張)
https://qiita.com/jonakp/items/7d9f47c613c16cbf95aa

create-react-app + TypeScript + eslint + prettier によって導入し、airbnb/huskyなどは入れませんでした。
なお、vscodeでなくWebStormを使っているので、WebStormの保存時に自動Prettierを適用する設定としました。

CSSフレームワーク

CSSフレームワークはreactStrapを使いました。
https://reactstrap.github.io/

AtCoder Problemsの真似です。
https://github.com/kenkoooo/AtCoderProblems

ナーススケジューリング問題を焼きなましで解いて可視化する

この記事は、数理最適化 Advent Calendar 2020 の17日目の記事です。遅刻してすみません・・。

qiita.com

今回は、ナーススケジューリング問題と呼ばれる勤務シフト作成問題を焼きなまし法で解いてみました。*1

Reactで可視化したので、以下リンクをご参照下さい。
https://threecourse.github.io/nurse-scheduling-simulated-annealing/

焼きなまし法とは何ぞや、という方は以下を見ていただけると分かりやすいかと思います。

kumagallium.hatenablog.com

shindannin.hatenadiary.com

最近の自分が追っているテーマの一つは、最適化などの技術をGUIと組み合わせることでさらなる価値を産み出すことです。 アルゴリズムもフロントエンドも両方学ぶのは自分の頭のリソースが厳しいので、同じような問題意識を抱えている方と協力したいですね。

*1:出典:
池上 敦子 (2018) ナース・スケジューリング:問題把握とモデリング 21P Millarsの論文の2交代制ナーススケジューリング問題
Millar, Harvey H., and Mona Kiragu. "Cyclic and non-cyclic scheduling of 12 h shift nurses by network programming." European journal of operational research 104.3 (1998): 582-592.